書評 1000日目の青空~ひきこもりの子供と話せるようになるために~ [Kindle版]

☆本書はうつ病により3年間ひきこもりを経験した筆者が自らの体験をふまえて、引きこもりの子供を持つ親にどのように接するべきかを解説した本である。

先ず第一に、引きこもりは社会(他者)に対するリアルな恐怖があるのだから、「大丈夫だ」とこどばで伝えたり、しっかりせよと叱咤激励しても解決しない。親に求められるのはまず子供の言葉に耳を傾け、子供の感じている恐怖を理解し、共感することだと説く。その結果、子供は初めて安心して親に心を開くことができるという。そして、

次に親自身が幸せになる努力をしなくてはならない。なぜなら子供は親子関係をひな形として自らの生き方を決めていくからだ。つまり、親である自分が幸せに生きる姿を見せることで子供に幸せになっても良いのだと納得させることができるのである。親であるあなた自身が社会や他者に対して恐怖を感じているのであれば、子供もまた自分の恐怖を乗り越えることはできないのだ。

さらに著者は発想の転換を勧めている。つまり、「すべての問題は、それを解決することで(根本的な問題を解決して)幸せになるためにある」という。著者の場合は自らの親子関係、しあわせを感じることなく死んだ母親を理解し、感謝することができたという。そしてもしも親子関係がうまくいかないのなら、それを解決することで幸せになれると説く。「あのときに声をかけなかった小さな後悔を、いまやっと果たす時期が来た」そう考えていただきたい。あなた(引きこもりの子供を持った親)が幸せになるために生まれてきたのだと思いだしてほしい。あなたが主人公なのだから。それが著者の主張である。

「きっと誰も私の苦しみを理解してくれない!」そう思って誰にも話すことができなかった人の苦悩、その人たちの話を聴き、寄り添うことを自らの生きる道だと説く著者にエールを送りたい。